コラム

依頼者への寄り添い


2026年06月26日

弁護士懲戒シリーズ、今回は、自由と正義2026年4月号で公表されていた事案です。

被懲戒者は、面会交流調停事件の期日の席上で、調停委員や調査官に対し、自分が死ぬ、(調停委員らも)服薬しろ、などと言った挙句、裁判官から注意を受けたところ、自身が服薬したことを示唆する行動に出た、とのこと。

背景事情は分からないのですが、穏やかではありません。

さて、私が弁護士になった頃、先輩方から、こと「マチベン」業をするにあたっては、依頼者と気持ちを同一化するな、とよく言われたものです。

他方で、よく「弁護士は依頼者に寄り添うべき」とも言われるもので、一見相反するように見えるこの二つの格言。

しかし、別に矛盾するものではないと思うのです。

「寄り添う」という日本語が曖昧なので混同しがちなのですが、良く依頼者の話を聞く、理解する(しようとする)、だけど、あくまで客観視していないと良い解決には至らないし、自分の精神も不安定になりかねない、ということなのでしょう。

逆に言うと、弁護士が依頼者の気持ちに入り込んでしまうことがそんなに特異ではないということです。

例えば、DV被害者の方からの依頼。もちろん、共感すべき点もたくさんありますし、細かい事情を聞かなければならない。弁護士側も気合が入ることも多い。被害者の方も、知って欲しい背景事情は山ほどある。

なのですが、人それぞれ許容量というものがあるのも事実で、一定値を超えると、弁護士側のメンタルがスピンアウトしてしまうこともあるのですね。

この件が、実際のところどういう経緯があったのかは分かりませんけど、面会交流事件ですし、夫婦間の紛争に直面していたのは確か。

メンタルケアには本当に注意が必要なのです。

なお、マンションオーナーの依頼者から、「借主が怪しい奴で、ちょっと貸室の中見たいんだけど、すぐ出て行くから入って大丈夫ですよね。ですよね。」。

気持ちは分からんでもないですが、絶対にうん、と言ってはいけない。これは、寄り添いでも何でもなく、単にアウト。

今時、録音もされているでしょうし。

*事案の概要は、自由と正義を参考に筆者が作成しました。


カテゴリー: 懲戒処分