コラム

賃借人の死亡と保証債務


2025年04月08日

「保証人にはなるものではない」という言は広く語られておりますが、借金の保証人はともかく、マンションを借りるときの保証人になってくれ、というお願いは、若干心理的ハードルが下がり、引き受けることも多いかもしれません。
賃貸借契約の保証人は、保証期間や保証限度額に制限がない、いわゆる根保証となっていることが多いのですが、借主が賃料を支払わない場合は、保証人が支払わなければなりません。それでは、借主が亡くなってしまったときに保証人の責任はどうなるか、という問題があります。

まず、賃借権は相続の対象となるので、相続人が借主としての地位を引き継ぐことになります。ごく一般的には、亡くなったことをオーナーに連絡して、オーナーと相続人との間で、相続人が住み続けるのか、相続人が他所で生活している場合などは契約を合意解約したり、といった話し合いがなされることが多いです。

それでは、相続人が賃貸借契約を引き継ぐ場合、この保証人の立場はどうなるでしょうか。
「友人である借主の保証人にはなったけど、亡くなった後、相続人の保証までするいわれはない」と考えるのが人情ですが、賃貸借契約が相続されて続くのであれば、保証契約も続くのが論理的です。
この点、借金の借主が亡くなった場合で、保証人になっていた内縁の妻による保証契約の解約を認めたケースもありますが(東京高裁昭和62年4月28日判決)、解約出来る出来ないでもめたり、下手したら裁判になったり、と、結構面倒です。

こういった不都合もあって、令和2年に民法が改正されまして、根保証の場合、借主の死亡により元本が確定されることになりました(改正民法第465条の4第1項3号)。と定められました。つまり、亡くなった時点までの賃料不払いが元本で確定し、それ以上増えない、ということです。

この改正民法の適用があるためには、施行日(2020年4月1日)以降に締結された契約であることが必要なのですが、徐々に、適用範囲は広がることでしょう。

親は真面目だが息子は・・・、というケースでもひとまずは安心です。

 


カテゴリー: 不動産相続

タグ: #保証人#相続