建物からの退去
2025年07月25日
私が受任する事件は、不動産に関連する案件の割合が比較的多いのですが、その中でも比較的頻繁なのが、不動産所有者による建物の明渡事件です。
典型例としては、賃借人が賃料を支払わない、無断転貸した、などの事情があるときに、賃貸借契約を解除して建物からの明け渡しを求める、というものです。
というとルーティン作業(簡単に終わる)のようにも見えますが、なかなか明け渡してくれないケースも多く、意外と手間がかかることもあります。
家賃の不払いを想定してみます。
まず、賃貸借契約の解除通知(しかも内容証明郵便で)をすれば、後ろめたい賃借人は出て行くのではないか、と思われるかもしれませんが、そうでもない。
例えば、個人の借主さんが居住用に借りているのであれば、仕事がなく貯金が底をついていて、開き直って日々住み続けているかもしれない。出て行くには引越し代がかかるので、解除通知は見てみぬふり。
法人の借主であっても、給与や税金の未納があった場合、売上が入ったら、家賃よりもそちらの支払いを優先してしまうこともあります。家賃の支払いは最後に回されることも多いのです。
家賃を支払っていないのは借主さん側なのですが、貸主や弁護士に対して非難のセリフが浴びせられることもあります。理不尽です。
どうしようもないときは、訴訟を提起するのですが、訴訟を起こされても、訴訟に負けても、粘って粘って居座るケースは珍しくありません。
勝訴判決が出た場合は「強制執行」といって、執行官とともに、要は強制的に占有者を排除するのですが、その日までいることももちろんあり、私も、怒声を浴びせられたことは何度もあります。なぜ浴びせられるかというと、そういうものだ、としか言いようがなく、こちらも無表情で受け流すしかありません。
知り合いの弁護士の話によれば、強制執行の現場に犬が放たれていたこともあったそうです。最終的にどう収束したのかは聞きそびれましたが、これもドキドキしますね。
そして、未払い賃料を回収できないケースも多いのです。
不動産オーナーの方は、賃料を単純な利回りで計算してしまうことも多いのですが、それとともに、賃料回収が滞った場合のリスク、予期せぬ修繕が発生した場合のリスク、固定資産税の上昇(でも賃料はなかなか上げられない)など、色々なことを想定しておく必要があります。
不動産オーナーというと、左団扇のイメージも強いですが、なかなか大変、ということです。
カテゴリー: 不動産