コラム

背信的悪意者


2026年04月30日

基礎的な民法の概念、それこそ法学部の1年生で習うであろう事項の一つに「背信的悪意者」というモノがあります。

民法177条は、「不動産に関する物権の得喪及び変更は・・・その登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」と定められています。

例えば、賃貸用マンションを購入した人が、賃借人に、「私が所有者・賃貸人になったから賃料支払え」と主張するには、登記がないといけない。登記がなされていれば、賃借人も所有者が変わったことを確認でき、安心して新賃貸人とお付き合いができる。要は、賃借人という第三者を保護するための制度です。

第三者を保護するための制度ということは、そもそも保護に値しない輩は「第三者」ではないということになります。このような連中を「背信的悪意者」といい、背信的悪意者に対しては登記がなくても所有権を対抗できるということになります。

例えば、権利者を騙したり強迫したりして登記をさせなかったような人物、が典型例としてあげられます(これは、不動産登記法にも規定されています。)。まあ、それはそうかな、と。

私が、実際の案件で、訴訟で背信的悪意者が問題となったというケースを聞いたのは1件だけです。

AさんがXさんから土地を購入したのですが、XさんとBさんの間で、建物所有を目的とする土地の賃貸借契約が締結されていました。しかし、土地上の建物は未登記だったので、土地の賃借人BさんはAさんに賃借権を対抗出来ない(借地借家法第10条)のが原則。なので、Aさんとしては、Bさんに対して、建物を取り壊して土地を明け渡してください、と主張できることになります。

しかし、Bさんは、Aさんは背信的悪意者なので、土地の賃借権をAさんに対抗できる、と争われたという次第です。

結果は、背信的悪意者の主張は認められず、Aさんの土地明渡請求は認められたということなのですが、最初にこの話を聞いたときは、一瞬とまどったのが正直なところです。

あまりに基礎的な論点なのに、実務上はあまり顕在化しないので。

初歩的な座学っぽい勉強も重要、ということですね。


カテゴリー: 不動産