コラム

遺言と代襲相続


2026年02月28日

今回は、孫の相続、を取り上げてみたいと思います。

言葉としては割と有名ですが、民法には「代襲相続」という概念があります。

民法887条2項は、「被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。」と定めています。

889条2項は、「第887条第2項の規定は、前項第2号(注:兄弟姉妹の相続)の場合について準用する。と定めています。

これが代襲相続の規定で、要は、子や兄弟姉妹が被相続人以前に(「先に」ではありません。被相続人と同時に死亡した場合も含みます。)死亡した場合は、その子が相続人となる、というものです(再代襲(子も孫も被相続人より先に死んでいた場合)はややこしいから置いておきます。)。

この定め自体は常識に近いですし、まあまあ聞く話ではあります。何も遺言がない相続の場合はこの規定にしたがうことになります。

ただ、遺言の関係では結構ややこしく。

例えば子Aと子Bの2人がXの相続人で、「①子Aに西麻布の土地1000坪を相続させる」「②子Bに洞爺湖のほとりの土地10坪を相続させる」「③それ以外の財産はABで等分に相続させる。預金も株式も100万円くらいしかないけど。」という鬼のような遺言があったとします(遺留分の問題は当然ありますけど、それはさておき)。

で、残念ながらAがXより先に死亡していた場合、Aの子Yは、西麻布の土地を相続できるのか?

これ、実は当然Yが相続するということにはならなくて、代襲相続させる意思があるか、ということを判断することになります。

最高裁(平成23年2月22日判決)では、

「上記のような「相続させる」旨の遺言は、当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから、遺言者が、上記の場合には、当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、その効力を生ずることはないと解するのが相当である」

と判示されました。当然に孫Yが相続するわけではない、むしろ、特段の事情がない限りそうではない、という結論です。

じゃあ特段の事情ってなんだ、ということなのですが、これまたあまりよく分からない。

この点、最高裁より前の時期ですが、東京高裁平成18年6月29日判決では、孫と良好な関係にある、特に有利不利のない相続扱いをしている、孫に相続させようとした書類があった、等の事情があった場合に、代襲相続を認めました。これが「特段の事情」の一例に当たりうるのでしょう。

一見、それは形式的では、という気もしますが、祖父祖母として、我が子には相続させたいけどあの孫にはね・・・・ということもあるわけです。

逆に、「子が先に死んだら孫にあげたい」と内心思っていたとしても、そのとおりにいかないかもしれない。

要は、そこらも遺言に書いとけ、ということなのです。端的に。

公正証書遺言の場合は、ほぼこのような記載をする実務になっていますが、自筆遺言の場合は忘れることも多そうですね。


カテゴリー: 相続