コラム

所有者では?


2025年10月25日

私は、不動産に関する事件の割合が割と多いのですが、一言で「不動産の事件」といっても内実は色々ですし、都心の不動産から値段がつかない不動産まで、対象地も様々です。

そして、その過程では、色々と想定し得ないことが起きることもあります。

色々と特定出来ないように内容を変更したりボヤかしていますが、印象深かったケースをあげてみます。

ある不動産オーナーがビルの一室を賃貸していたのですが、家賃が滞っているとのこと。

家賃の請求をしても返事はなく、現地に赴いたところ不在でしたが、ポストには、借主とともに見知らぬ会社のプレートが貼られていました。

これは無断転貸?詳細な状況はそれ以上分からんし、占有関係がこれ以上乱れてはいかんということで、占有移転禁止仮処分を申し立てましょう、ということになりました。

仮処分はスピードが必要なので、せっせと起案をしつつ、賃貸借契約書の原本などの必要書類を取得。

念のため、ビルの登記(全部事項証明書)を最新のものにしましょう、ということでこれもあらためて入手したところ、ん?つい先月に、依頼者から名義が変わっている。

「これ、どういうことですか?」

「あ、譲渡しました。いい買い手がいたので。」

全く、重要ごととは思っていない様子。悪気がないのだから、しょうがない。

賃貸人の地位は新所有者に移転するのです、とか(このことを全く存じ上げなかった様子。)、滞納していた賃料債権は譲渡しましたか?とか、色々と説明したり事情聴取したりした上、申立ては延期。

後日、無事、新しいオーナーの代理人となり、あらためて仮処分を申し立てました。

何はなくとも、建物の登記は、直前のものを見ましょう、というお話です。


カテゴリー: 不動産