弁護士の懲戒処分(規程違反)
2025年05月23日
今回は、弁護士に対する懲戒処分を検討してみたいと思います。
弁護士に対する懲戒処分とは、「品位を失うべき非行」等があったときに、弁護士会から下される処分で、戒告、業務停止、退会命令、除名、の4種類があります。実務的にも、精神的にも、お客様の信頼的にも、ダメージが大きい手続きです。
今回は、自由と正義(業界誌)2024年12月号で公表されていた事案を取り上げたいと思います。
各弁護士会が「依頼者の本人特定事項の確認及び記録保存等に関する規程」という規定を設けています。弁護士は、業務上、人のお金を預かったり、それを支払ったりすることがあるため、悪い依頼者にマネロンなどに利用されることがあるのです。それを防止するために、依頼を受けたときは、きちんと本人について人定(何者か)を確認してくださいね、という規程です。
弁護士は、独立性保持という趣旨で官庁による制約や指示を受けない反面、弁護士会に所属しないと業務ができず、弁護士は、所属弁護士会及び日本弁護士連合会の会則を守らなければならない。という義務を負っています(弁護士法22条)。
そして、この作業については、毎年弁護士会に報告しなくてはいけないのですが、これを怠った、ということで処分された事案が本件です。
結果は、業務停止1月。つまり、1ヶ月間は業務が禁止されてしまうわけです。裁判にも行けない、法律相談も出来ない。
これを無視して業務を続けた場合は、さらに懲戒処分が下る可能性が大きく、お金がなくなった→窃盗した→仕事をクビになってお金がなくなった→窃盗した、みたいなスパイラルに陥ってしまいます。
さて、この件、一見すると、例えば依頼を放置したりとか、お金のトラブルを起こしたとか、いわば依頼者に迷惑をかけたケースではなく、単純な手続ミスにも見えます。
これで業務停止1月というと結構重いような感じも受けますが、2019年から2022年の3年間、提出しなかったということで、単に忘れていただけ、じゃないようにも見えます。3年間やらなかったのだから、よく分かりませんが、維持だとか、こういう規程に対して何かしら反発があったのかもしれません。
規程に対して意見があり、本当に廃止したいのなら弁護士会のロビイングなどをする、ということかもしれません。
*事案の概要は、自由と正義を参考に筆者が作成しました。
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