寄与分について
2025年09月26日
相続は、関係者(しかも親族が多い)の利害がぶつかりあう場面です。
なので、色々な立場を調整する必要があるので、それに伴って色々な制度が定められています。
そんな中、今回取り上げるのは「寄与分」で、要は、相続人が「私は被相続人の世話をしていたのだから多くよこせ」という制度です。
この言い方は下品なのですけれど、感覚的には分からんでもない。
ひとまず、配偶者が亡くなって親は1人、子どもが複数いる家庭を考えてみますが、親が高齢だったり病気だったりした場合、子どもがたくさんいてもキーパーソンとなる人は1人であることが多く、自然と、その方に介護等の負担が過剰に寄ってしまうのはよくあることです。
他方で、民法では「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定められており、子は親に対して扶養義務を負っています(民法877条)(話がズレますが、直系血族のほか、兄弟姉妹にも扶養義務があると明記されているわけです。実際に問題となる場面はさほど多くはないですが、頭の片隅には入れておいていいでしょう。)。
この寄与分制度と扶養義務は一見矛盾しているように見えるのですが、ざっくり言うと、扶養義務があるといえども、なかなか負担が大きかった、という事情が認められれば、寄与分が認められることになります。
じゃあ、どの程度なのかというと明確な基準があるわけではないのですが、介護をしていた期間であったり、当時の介護がどれだけ大変だったか(要介護度とか)、どのような介護をしたか、その介護が財産保全に役に立ったか、等、色々な事情を主張することになります。
で、寄与分があると認められたとして、どの程度の金額が認められるかというのも難しいところです。
この点、参考になる規定として、「要介護認定等に係る介護認定審査会による審査及び判定の基準等に関する省令」というのがあり、ここでは、要介護認定4の場合の1日あたりの基準時間が90分以上110分未満と定められています。そして、厚生労働省は「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」という基準を定めていて、訪問介護費の計算基準が定められています。年度によって異なるのですが、この基準で、90分から110分の介護サービスの費用を算定すると、現状では1万円には満たない金額になります。
もちろん、これが裁判で用いられる絶対的な数値ではないですが、一つの指標としては参考になると思います。
親族の介護は、気持ちでやっていく側面が大きいですが、善意の頑張りが一定のラインを超えると精神的な負担が大きいですし、相続の場面で寄与分として多額の評価がされないことも多い。
綺麗事ではありますが、仲が良くなくても、兄弟で協議して協力分担しながらやっていく(ように努力する)という意識は重要なのでしょう。そのプロセスを経ていれば、寄与に関する紛争は少しでも減るのではないかな、と思います。
カテゴリー: 相続